Masuk【受賞作:『💕契約から始まる恋』シリーズコンテスト】 杵島 充希(きじま みつき)は大手企業・大和田グループの社長の娘。 そんな充希は大和田グループとライバル関係にある杵島グループの社長・杵島 宗司(きじま そうじ)と結婚をする。 しかし、この結婚は偽装結婚で、三年間という期間限定で離婚する「白い結婚」だった。 だが、結婚二年目の節目の日に、充希と宗司は白い結婚の誓いを破り、一線を越えてしまう。 このことで双子を妊娠した充希は、これを機に、偽装結婚ではなく本当の夫婦として暮らすことを宗司に提案しようと考える。 しかし、妊娠が判明したその日に、充希は宗司から離婚届を突き付けられてしまう。
Lihat lebih banyak「どうしてこうなった……」 宗司さんはがっくりと項垂れていた。「もう。宗司さん、まだそんなことを言っているの? もう式が始まりますよ。早く準備をしてください」「充希、俺は言ったはずだ。絶対にだめだぞ、と」「はいはい。そうでしたね。でも仕方ないじゃないですか。本人たちがお互いを好きになっちゃったんですから」「そうなるように仕向けたんじゃないのか?」「それは……。まあ、幸恵と私は親友だから、よくお互いの家を行き来していたし、接触機会は多かったとは思うけど。でも結婚まで話が進んだのはお互いの気持ちがあってのことよ。親や周囲がどうこう言って結婚させられるものじゃないわよ」「それはそうかもしれないが……」 宗司さんがそうやってグズグズしていると幸恵と秘書さんがやって来た。「なによ、宗司。まだうじうじ言っているの? そう言われるとね、私は自分の娘が気に入らないと言われているみたいで本当に不愉快なの。失礼だからやめてちょうだいよね」「そうですよ、宗司会長。娘を嫁に出す僕たちの気持ちも考えてください」 宗司さんは二人に責められて溜息をついた。「娘を嫁に出す親の気持ちなら、去年、うちの琴が武くんに嫁ぐときに嫌というほど味わった」「そういえばそうだったわね」「確かにそうでした。宗司会長があんなに泣くなんて思いもしませんでした」「お前も泣くぞ。絶対に泣く。泣くもんかと思っていたって泣けてしまうんだ」「そんなに脅さないでください。僕だって自信がないんですから」「恥ずかしいからやめてよね。父親らしく胸を張ってどっしり構えていてちょうだい」 幸恵が秘書さんの背中を叩いて喝を入れた。「でもまさか本当に私の子と幸恵のお子さんたちがクロスカップルになるとは思いもよらなかったわ」「本当にそうよね。去年は充希の琴ちゃんとうちの武が結婚して、今年はうちの巫と充希の勇くんが結婚するんだもの」 幸恵は溜息交じりだったが、とても嬉しそうだった。「武くんはお母さんに似て本当にかっこいいから、琴はそんな武くんが大好きみたい」「それでいうなら勇くんだって、お父さんの芯の強さに、お母さんの優しさが加わっているから、本当に理想的な好青年よね。うちの巫が好き
「お、お父さん。どうしてここに?」 私は予告なしに父・大和田 毅が現れたことに驚く。「充希の親友の幸恵さんがご出産されたと聞いたからお祝いとお見舞いにきたんだ。 幸恵さん、お久しぶりです。出産おめでとう。幸恵さんも充希と同じく双子をご出産されたと聞いて驚いているんですよ」 幸恵と私の父・毅は面識があった。 それは中高一貫校時代、私と幸恵はお互いの家を盛んに行き来していたので、その時に何度も会っていたのだ。「毅おじ様。お久しぶりです。そしてありがとうございます。今は無事に子どもが出産できて、とても喜んでいます」 幸恵はとてもかしこまった様子で返事をした。「いや、しかし、あのお転婆だった幸恵さんが二児の母になられたとは。娘の充希が子どもを産んだ時も驚きでしたが、それ以上に驚きですよ」 父・毅は冗談めかして幸恵をからかった。 その点をくすぐられると幸恵も弱いようで「もう。毅おじ様。やめてください」と恥ずかしそうだった。「あ、あの……。お父さ……。いえ、大和田さん」 狼狽えていたのは彩寧だった。 彩寧は私の父・毅が現れたことを本当に驚き、そして「どう対応して良いのか」について困っている様子だった。 それは先日、自分が篠原 真紗代と大和田 毅の子どもではなく、篠原 真紗代と杵島 巧三の子どもであるという事実を知らされたからだった。「彩寧。こっちにきなさい」 そんな彩寧を父・毅は優しく手招きする。 そして彩寧が自分の元にやってくると包み込むように抱きしめた。「お前は私の娘だ。誰がなんと言おうとお前は私の娘だ。だからお前も、これまで通り私のことを自分の父だと思って頼りなさい。何一つ引け目を感じる必要はない。私たちは親子だ。血の繋がりなんて関係ない。親子なんだ。そのことを絶対に忘れるんじゃないぞ」 父にそう諭されると、彩寧も両手を父に回し、父の胸に顔をうずめて涙を流した。「それで宗司社長。先日のお話の件ですが───」 ひとしきり彩寧と抱擁を交わした父・毅は今度は宗司さんに向き直る。「はい。大和田社長。杵島グループと大和田グループの合併の件ですが、ぜひ前向きにご検討いただきたいと思っております」 私は宗司さんの言葉に驚く。
「ずいぶんと賑やかね」「病院ではお静かに。他にも患者さんや妊婦さんがいる」 そう言って現れたのは彩寧と種村 崚佑だった。「彩寧!? それに崚佑も!?」 幸恵が二人の登場に声をあげる。 幸恵にとって二人は得意な間柄というわけではなかった。 彩寧は幸恵にとって、中高一貫校時代の剣道部の部活動で、真面目に練習に取り組まず、宗司さんの姿ばかり追いかける不真面目な部員で、剣道部の部長として幸恵は彩寧にほとほと手を焼いていた。 崚佑さんは大学時代の同級生だったようだが、ことあるごとに「あいつは見た目はイケメンだけど、中身はヤバイ奴なの」と警戒心をあらわにしていて、苦手にしている相手だということは周知の事実だった。「な、何をしに来たのよ、ふたりとも」 幸恵は警戒心をあらわにする。「何をしに来たって言うのはひどいですね。お見舞いと出産のお祝いに来たんです」 彩寧はお見舞いとお祝いの品を幸恵の夫である秘書さんに手渡す。「僕は産婦人科医として赤ちゃんを診に来た。うん。無事に産まれたみたい。問題はなさそう。でも不満がある。出産の担当医は僕にさせてもらいたかった」「ば……っ! ばかじゃないのっ!? そんなことさせるわけないでしょ! 顔見知りの、それも大学時代の同級生の男子に、自分の出産の担当医なんて、そんなことさせるわけないじゃない!」 幸恵はヒステリー気味に崚佑さんを非難する。 それに対して崚佑さんは、「なんで?」といった様子で小首をかしげていた。「そんなこともわからないの!? ノーデリカシー! やっぱりあんたはヤバイ奴だわ! 彩寧! やめなさい! 今すぐこんな男と付き合うのはやめなさい!」 そう言われた彩寧は目に見えて驚く。 そして実は私も驚いていた。「え? うそ。な、なんで? なんで幸恵部長は私と崚佑が付き合っていることを知っているの?」 「え? 彩寧って崚佑さんとお付き合いしているの?」 私と彩寧が驚く姿を見て幸恵は「当り前じゃない! それで隠しているつもりなの? 見え見えよ!」と息巻いた。「そ、そうなんだ。彩寧、それに崚佑さん。おめでとうございます」 私は二人を祝福した。「この前、赤ちゃんを預かったとき、彩寧さんはお礼に「なんでも言うことを聞いてあげる」といった。だから僕
「私が臨月の間に、そんなことがあったなんてね」 幸恵は病室のベッドの上でぐったりしていたが、最後まで私の話を聞いてくれた。「そうなの。本当に大変だったの。もう自分の赤ちゃんに二度と会えないんじゃないかと本当に怖かったんだから」 私は幸恵の傍らでリンゴの皮を向き、食べやすい大きさにリンゴをカットすると、餌付けするように幸恵の口にリンゴを運んだ。 幸恵は餌をねだる雛鳥のように口を開ける。 そして口の中にリンゴが入れられるとショリショリと音を立ててリンゴを食べた。「宗司も宗司よ。なにをしているのよ。父親としてはもちろんだけど、大企業の社長としての自覚があるの? 自分の子どもを奪われるなんて。これが身代金目的の誘拐だったらどうする気?」 幸恵にそう責められた宗司さんは居心地が悪そうだったが、真摯に反省しているようだった。「確かにその通りだった。迂闊だった。それ以降は二度とこのようなことがないよう、充希一人に任せっきりにせず、俺も子どもたちを今まで以上に気にかけ、守るようにしている」 宗司さんは反省の弁を述べたが、尚も幸恵に「最初からそうしてなさいよ」などとさらに責められ続けた。 私はそんな二人のやりとりに、少しだけ、中高一貫校時代の部活動のときのようだと懐かしんだ。「幸恵、それに充希さん、そして宗司社長! うちの子たちの健康チェックが終わって、新生児室に戻ってきましたよ!」 病室に駆け込んできたのは幸恵の夫にして宗司さんの会社で宗司さんの社長秘書をしてくださっている鬼灯 猿田彦さんだった。 とても興奮した様子で、早く来てくださいと盛んに私たちを手招きした。「幸恵は起き上がれるの? 新生児室まで行くことができるの?」 私は何とか起き上がろうとする幸恵を気遣った。「これまで何人もの妊婦さんに、産後だからといって寝てばかりじゃなく、立って歩いた方がおりものが早く排出されて良いと指導してきたの。そう言った本人が自分の言った通りにしないなんて絶対に許されないわ」 そう言うと幸恵は無理をしてベッドから降り、私と夫の秘書さんの肩を借りながらだが、一緒に新生児室まで歩いた。「少子化が叫ばれる昨今だけど、それでも赤ちゃんがいっぱいね」 私は新生児室に並んでいる赤ちゃんを廊下のガラス越し
Ulasan-ulasanLebih banyak